2026/07/14 Tue Novels,Blog 011/Altar and Sacrifice 白薔薇隊の掟、人を殺めてはならない。 相変わらずの曇り空で風が時々強く吹いては草や木の枝同士の叩く音が響き、天使達の死骸がある場所を決闘場として、拍手を送っているようにも聞こえた。 私は兵士で相手は僧侶。いや、元白薔薇隊の兵士か。互いの刀と剣は薄い日の光を反射させている。 喪服の僧侶はゆっくりこちらに向かい、歩きながら話した。刀を構えながら。 「返してもらいましょうか」 女は私に睨み言い放った。私は半笑いを浮かべた。 「嫌だと言ったら……?」 僧侶は刀を構えながら、風のように飛び走り、刀を私に向けて振り落とした。私は咄嗟にミゼリコードで受け止めた。刃同士の軋む音が響く。僧侶は声を荒げ、力強く刀を押す。 「あの時、躊躇しないで取ってしまえばよかったわ!」 私も抵抗する力を入れる。 「もう遅いんだよ!」 目一杯、ミゼリコードで僧侶を押し返し、反動で後ずさらせた。痛いぐらいに奥歯に力が入り食い縛る。 「ジェーンを返して!!」 僧侶は金切り声をあげた後、目を片手の袖で擦り構え直した。目が潤み、片方の袖で目を擦った所の布の色が変わっていた。 「私を介抱してた時にいくらでも出来ただろ!」 私は怒鳴り声をあげ、続ける。 「何故やらなかった!」 ミゼリコードを片手で僧侶に指し言葉を投げかけた。投げかけて返って来る言葉は答えにならなく無駄だった。 「ジェーンを返してっ!!!!」 僧侶はまた私に向かい、刀は風を斬る。決闘場は刃と刃の叩き合う音が鳴り響き、刃は薄い日の光を何度も反射させる。 僧侶の刀は激しい。だが今までして来た天使狩りの疲れと私を目の前にして冷静さを失っているのがわかる。僧侶の刀に出ているので私は守りに徹し、反撃の機会を伺いながら攻撃を受け止める。雑だが、やはり只者ではない。 僧侶はなりふり構わずに刀を振るっては受け止める度に金属同士のぶつかる音が何度も響き、次第に隙が多くなった。大きく降った後に隙が出来ている。私はそこをついた。 僧侶はまた刀を大きく振るう。 よし、今だ! 私は僧侶の刀をはね除け、僧侶はよろめいた。その隙に素早く腹にミゼリコードを深く斬りつけた。斬りつけた拍子に血の雫が飛び散り、地面を叩いた時は花びらのように見えた。 僧侶は立ちすくみ、片手で腹の傷口を押さえながら、刀を取りに行こうとしたのか後ずさろうとした後に仰向けに倒れた。 私は倒れた僧侶にゆっくり歩き近づき、相手の傷口に向けて剣を指す。それを見た僧侶は諦めたのか目を瞑った。 「仕返し出来て清々したよ」 私はミゼリコードの引き金に手にかけた。手にかける前に名前だけは聞いておこうか。 「あんた、名前は?」 僧侶は眉間に皺を寄せながら、目を瞑ったまま、口を動かした。 「……ビルギット」 僧侶は腹の痛みに耐えながら名乗った。私に答えが帰って来た。私はミゼリコードの引き金を強く引き、液体の薬を腹の傷口に垂らした。雫は剣を伝う。 横たわってるビルギットと言う僧侶のロングスカートの裾に手をかけた。手にかけた時、ビルギットは目が開き、目線を私に向けた。何か物言いたげな顔をしているが、さっそくの薬の効果で声が出そうにも出せずに荒い呼吸音だけが聞こえる。 お前、私にやった事を忘れたのか? 私は勢いよくスカートの裾を一部破いた。破いたスカートだった布は包帯状にした。ビルギットのロングスカートが膝ぐらいのスリット状になり、ビルギットの傷とアザだらけの片足が少し覗いた。私は破いたスカートの布でビルギットの腹部の刺し傷に止血して布を巻いた。 ビルギットは相変わらず何か言いたげに呼吸を荒げながら、起き上がろうとしている。その様子は青虫みたいにもがいている。 「暴れるな」 ビルギットの腕を掴んで押さえ、私の体が彼女に覆い被さるように押さえつけた。 「言っておくが殺すつもりはない」 私は押さえた腕の力を緩め放し、彼女の体から自分を退いた。止血した場所は血が滲んで赤くなっている。ビルギットは薬でなのか悩ましげだが、どこか安心しているかのような顔をしている。私は 彼女の元から立ち上がり見下ろした。 「それに、一般の人は殺すなという掟がある。私はそれを守る」 ビルギットは私の方を見て、待てと言わんばかりに片手を伸ばした。私は何もせず、自分が刺した女のその場から立ち去った。 風が強く吹きあがり、羽が舞う。風の音と共にあの鳴き声が遠くから聞こえる。あの汚い鳴き声がどんどん近くなっているので、私は立ち止まって空を見ると、後ろを振り向いて遠く小さくなったビルギットに白いトリ達がビルギットの上空に弧を描きながら飛んでいる。 天使が来た。 トリのような見た目をしている天使は鳴き声をあげながら、私が刺したビルギットの方へ一〇匹舞い降りて来た。仲間の死骸が転がっていると必ずやって来る。 トリの群れの汚い鳴き声は獲物を見つけた歓声に聞こえた。ビルギットは天使の餌食にならまいと必死に刀を手にかけ、上半身を起き上がらせた。体に力を入れた影響で止血した腹部から、さらに血が滲んでいる。 必死に刀を振り回して追い払おうともがき、刀を振り回した不意に一〇匹中の二匹のトリがビルギットの振り回した刀が翼に当たり鳴き喚いて飛べなくなった。 けっこうやるものだな。 これだけ元気があれば、彼女は生き残るだろう。掟は守った。 後は私が知ったことではない。 「死骸を片付けろというのは、こういう事だよ」 私は振り返らず、そう言い残して、静かに天使の死骸がある決闘場を後にした。決闘場は生きたままの鳥葬の場となった。 風が強く吹き、天使の羽が雪のように舞った。 #AlaterandSacrifice
011/Altar and Sacrifice
白薔薇隊の掟、人を殺めてはならない。
相変わらずの曇り空で風が時々強く吹いては草や木の枝同士の叩く音が響き、天使達の死骸がある場所を決闘場として、拍手を送っているようにも聞こえた。
私は兵士で相手は僧侶。いや、元白薔薇隊の兵士か。互いの刀と剣は薄い日の光を反射させている。
喪服の僧侶はゆっくりこちらに向かい、歩きながら話した。刀を構えながら。
「返してもらいましょうか」
女は私に睨み言い放った。私は半笑いを浮かべた。
「嫌だと言ったら……?」
僧侶は刀を構えながら、風のように飛び走り、刀を私に向けて振り落とした。私は咄嗟にミゼリコードで受け止めた。刃同士の軋む音が響く。僧侶は声を荒げ、力強く刀を押す。
「あの時、躊躇しないで取ってしまえばよかったわ!」
私も抵抗する力を入れる。
「もう遅いんだよ!」
目一杯、ミゼリコードで僧侶を押し返し、反動で後ずさらせた。痛いぐらいに奥歯に力が入り食い縛る。
「ジェーンを返して!!」
僧侶は金切り声をあげた後、目を片手の袖で擦り構え直した。目が潤み、片方の袖で目を擦った所の布の色が変わっていた。
「私を介抱してた時にいくらでも出来ただろ!」
私は怒鳴り声をあげ、続ける。
「何故やらなかった!」
ミゼリコードを片手で僧侶に指し言葉を投げかけた。投げかけて返って来る言葉は答えにならなく無駄だった。
「ジェーンを返してっ!!!!」
僧侶はまた私に向かい、刀は風を斬る。決闘場は刃と刃の叩き合う音が鳴り響き、刃は薄い日の光を何度も反射させる。
僧侶の刀は激しい。だが今までして来た天使狩りの疲れと私を目の前にして冷静さを失っているのがわかる。僧侶の刀に出ているので私は守りに徹し、反撃の機会を伺いながら攻撃を受け止める。雑だが、やはり只者ではない。
僧侶はなりふり構わずに刀を振るっては受け止める度に金属同士のぶつかる音が何度も響き、次第に隙が多くなった。大きく降った後に隙が出来ている。私はそこをついた。
僧侶はまた刀を大きく振るう。
よし、今だ!
私は僧侶の刀をはね除け、僧侶はよろめいた。その隙に素早く腹にミゼリコードを深く斬りつけた。斬りつけた拍子に血の雫が飛び散り、地面を叩いた時は花びらのように見えた。
僧侶は立ちすくみ、片手で腹の傷口を押さえながら、刀を取りに行こうとしたのか後ずさろうとした後に仰向けに倒れた。
私は倒れた僧侶にゆっくり歩き近づき、相手の傷口に向けて剣を指す。それを見た僧侶は諦めたのか目を瞑った。
「仕返し出来て清々したよ」
私はミゼリコードの引き金に手にかけた。手にかける前に名前だけは聞いておこうか。
「あんた、名前は?」
僧侶は眉間に皺を寄せながら、目を瞑ったまま、口を動かした。
「……ビルギット」
僧侶は腹の痛みに耐えながら名乗った。私に答えが帰って来た。私はミゼリコードの引き金を強く引き、液体の薬を腹の傷口に垂らした。雫は剣を伝う。
横たわってるビルギットと言う僧侶のロングスカートの裾に手をかけた。手にかけた時、ビルギットは目が開き、目線を私に向けた。何か物言いたげな顔をしているが、さっそくの薬の効果で声が出そうにも出せずに荒い呼吸音だけが聞こえる。
お前、私にやった事を忘れたのか?
私は勢いよくスカートの裾を一部破いた。破いたスカートだった布は包帯状にした。ビルギットのロングスカートが膝ぐらいのスリット状になり、ビルギットの傷とアザだらけの片足が少し覗いた。私は破いたスカートの布でビルギットの腹部の刺し傷に止血して布を巻いた。
ビルギットは相変わらず何か言いたげに呼吸を荒げながら、起き上がろうとしている。その様子は青虫みたいにもがいている。
「暴れるな」
ビルギットの腕を掴んで押さえ、私の体が彼女に覆い被さるように押さえつけた。
「言っておくが殺すつもりはない」
私は押さえた腕の力を緩め放し、彼女の体から自分を退いた。止血した場所は血が滲んで赤くなっている。ビルギットは薬でなのか悩ましげだが、どこか安心しているかのような顔をしている。私は
彼女の元から立ち上がり見下ろした。
「それに、一般の人は殺すなという掟がある。私はそれを守る」
ビルギットは私の方を見て、待てと言わんばかりに片手を伸ばした。私は何もせず、自分が刺した女のその場から立ち去った。
風が強く吹きあがり、羽が舞う。風の音と共にあの鳴き声が遠くから聞こえる。あの汚い鳴き声がどんどん近くなっているので、私は立ち止まって空を見ると、後ろを振り向いて遠く小さくなったビルギットに白いトリ達がビルギットの上空に弧を描きながら飛んでいる。
天使が来た。
トリのような見た目をしている天使は鳴き声をあげながら、私が刺したビルギットの方へ一〇匹舞い降りて来た。仲間の死骸が転がっていると必ずやって来る。
トリの群れの汚い鳴き声は獲物を見つけた歓声に聞こえた。ビルギットは天使の餌食にならまいと必死に刀を手にかけ、上半身を起き上がらせた。体に力を入れた影響で止血した腹部から、さらに血が滲んでいる。
必死に刀を振り回して追い払おうともがき、刀を振り回した不意に一〇匹中の二匹のトリがビルギットの振り回した刀が翼に当たり鳴き喚いて飛べなくなった。
けっこうやるものだな。
これだけ元気があれば、彼女は生き残るだろう。掟は守った。
後は私が知ったことではない。
「死骸を片付けろというのは、こういう事だよ」
私は振り返らず、そう言い残して、静かに天使の死骸がある決闘場を後にした。決闘場は生きたままの鳥葬の場となった。
風が強く吹き、天使の羽が雪のように舞った。
#AlaterandSacrifice